村上春樹の「1Q84」が発禁処分に!? 「検閲」のある国イランの出版事情と日本との意外な共通点
世界の書棚から 第4回 イラン
我が家の近くにある、
文房具や幼児本、玩具も扱う、カフェが併設された書店「ブック・シティー」では、小説を多く取り扱っていました。
中でも一番売れていると言って店員男性が紹介してくれたのが、トルコ人の著者エリフ・シャファクの「メッラテ・エシュク」をペルシャ語に翻訳した本。
イラン人の詩人の師弟関係などを描いた物語だそうです。
翻訳ものではありますが、イランをルーツとしているため、若者だけではなく、幅広い年代の人に購入されているようです。
簡単な心理学、スピリチュアルといった精神的な事柄、特に、仕事や結婚など、人生でいかにして成功を得られるかといった自己啓発本は、少なくともここ10年ほど、ずっとベストセラーなんだとか。
店員の男性は、「みんな、成功や幸福を求めているからね」と話していました。
これは、アメリカ人の著者フローレンス・スコーヴェル・シンによる1925年に出版された自己啓発本「ゲームの法則」の翻訳だそうです。
山積みになっていました。
イランには豊かな文学の歴史があります。
「千夜一夜物語」はアラビアン・ナイトの別名で知られますが、もとは中世のペルシャ(イランの旧名)で記されたものだとされています。
その他、フェルドゥシーの「シャー・ナーメ」やオマル・ハイヤームの「ルバイヤード」といった作品、ハーフェズらの詩は、世界史的にも有名です。
同書店の地下では、歴史的なもの、古くからの詩や物語を集めたコーナーがありました。
凝った装丁のコーラン。
イランの家庭に一冊はあるとも言われる、ハーフェズの詩集やフェルドゥシーの物語は、恭しくケースに入れられたハードカバーのものが揃っていました。
表紙に木や石が使われている詩集や歴史本も、素敵です。
イランでは本離れが懸念されています。
新刊の値段が高いことも一因で、年に一度のブックフェアで割引本を狙う人も多いそうです。
一方で、検閲の及ばない「卑猥」な表現を含む作品が、携帯の普及などでネットを通じて簡単に青少年の目に触れることも、問題視されています。
日本からは遠い存在のイランですが、日本の状況と似た点も多いです。
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